事業者が使えるAI画像作成の使いどころ
事業者が使えるAI画像作成の使いどころ
事業者にとって「AI画像作成」がもたらす価値
AI画像作成とは、テキストプロンプトや既存画像から、短時間で高品質な画像を生成・編集できる技術です。拡散モデル(Stable Diffusion系、DALL·Eなど)を基盤に、バナー、商品画像、コンセプトアートなどを自動生成できます。商用ライセンスを明示したSaaS型や、カスタム可能なAPI、オンプレミス型など、導入形態も多様です。
2025〜2026年時点では、日本のビジネスパーソンの約6割が社内業務で生成AIを活用しており、その中でも資料挿絵・アイデアスケッチ・SNS用画像など「画像まわり」の用途が大きな割合を占めています。PhotoshopやIllustratorといったプロ向けツールとも連携が進み、従来は数日〜数週間かかっていた制作工程が、数秒〜数分単位まで短縮されつつあります。
事業者向けの「使える/使えない」を分ける3つのポイント
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権利関係(商用利用可否)
学習データや利用規約上、商用利用が許可されているツールを選ぶことが重要です。
特に、Getty Images vs Stability AIのような訴訟例もあるため、
「どのデータで学習されているか」「生成物の権利帰属はどうなっているか」
を確認することは、事業継続の観点でも欠かせません。Adobe Fireflyのように著作権面をクリアしたデータセットで学習している製品は、企業からの採用が進んでいます。 -
セキュリティと機密管理
機密情報をクラウドに送信してよいか、オンプレミスやプライベートモデルが必要かを判断する必要があります。
欧州のEU AI Actなどでもモデルのトレーサビリティやログ管理が求められ始めており、日本企業でも、
顧客データや未公開製品情報を扱う業務にはオンプレミス・VPC上のモデルを使い、マーケティング用の一般的な画像はクラウドSaaSで済ませる
といった「用途ごとの切り分け」が一般的になりつつあります。 -
品質と制御性
ブランドトンマナを保てるか、カスタムモデルやプロンプトによって安定的な出力が得られるかがポイントです。
ブランドカラーや自社キャラクターを学習させたカスタムモデルを用いると、毎回細かくプロンプトを工夫しなくても、ブランドに沿ったビジュアルを一定品質で出力しやすくなります。特に、資料挿絵や広告の「バリエーション量産」で効果を発揮します。
中小企業と大企業でのメリットの違い
中小企業にとっては、コスト削減とスピード向上が大きなメリットです。SaaSツールで短期間に運用を開始でき、外注していたバナー制作費を最大90%削減しつつ、SNS投稿頻度を2〜3倍に増やせた事例もあります。デザイン人材が社内にいない場合でも、CanvaやFireflyのテンプレートとAI生成を組み合わせることで、「一定の見栄えを備えたクリエイティブ」を自力で用意しやすくなります。
大企業では、ブランド統制、法務・ガバナンスへの対応、オンプレミス環境やカスタム学習による高い再現性が重視されます。API連携や社内標準ツールの導入によってスケールさせるパターンが多く、広告代理店・飲料メーカー・製造業などでは、「初期案はAIで量産 → クリエイターが選別・磨き込み」というプロセスを構築し、制作時間を半減させている例が増えています。
どんな業種で成果が出ているのか
マーケティング・広告業界
広告バナー・LPの量産
複数サイズ・複数訴求パターンを短時間で生成し、ABテスト用素材を効率的に用意できます。
Shopify Magicのような機能では、商品説明文だけでなく商品画像やバナーも自動生成することで、EC事業者が10〜20%程度の売上向上につなげたと報告されています。人手では出し切れなかった「細かいターゲット別訴求」を、大量の画像バリエーションによって実現しやすくなっています。
SNS投稿画像のバリエーション生成
同じテーマで色や構図を変えた複数案を用意し、運用負荷を下げながら投稿頻度を上げることができます。
CanvaやFireflyを用いれば、1つのキャンペーンキーコピーから、Instagram用正方形、X(旧Twitter)用横長、ストーリーズ用縦長などを一括生成し、あとはテキスト差し替えのみで運用することが可能です。この方法により、担当者1人当たりが運用できるアカウント数を増やす施策としても有効です。
EC・小売業界
商品画像の自動生成・自動レタッチ
背景差し替えや複数角度の合成を自動化し、撮影コストを削減できます。
ShopifyやCanvaの生成AIを使えば、白背景の商品写真から「クリスマス風」「バレンタイン風」などのシーン画像をワンクリックで生成でき、撮影スタジオを都度手配する必要がなくなります。EC運営者の間では、
「撮影はシンプルな1パターンだけ行う → シーン画像はすべてAIで量産する」
というワークフローが定着しつつあります。
シーズンキャンペーン画像の高速制作
セール告知や季節訴求のクリエイティブを短期間で多数作成できます。
中小規模の小売店でも、週替わりセールや天候連動キャンペーンに合わせてヘッダー画像・ポップ画像を都度差し替える運用が可能となり、「人手不足でキャンペーンを打ちたくても打てない」というボトルネックを解消しやすくなっています。
製造・建設・BtoB企業
提案資料・企画書用イメージの高速作成
コンセプトを伝える簡易ビジュアルを迅速に作成し、議論を促進できます。
日本の製造・建設業では、パナソニックコネクトや西松建設などが社内向け生成AIツールを導入し、営業・企画担当が自ら「完成イメージ」や「コンセプトスケッチ」を作れるようにすることで、設計部門とのコミュニケーションを円滑化しています。
完成イメージCGのたたき台としての活用
詳細設計前のイメージ共有やクライアントとの合意形成に有効です。
たとえば建設会社では、建物の外観イメージをAIで複数案生成し、顧客と「どの方向性が好みか」を初期段階で擦り合わせることで、後戻りコストを抑えています。この場合、AI画像はあくまで「ラフスケッチ」であり、最終的な施工図やCGパースは専門チームが作り込むという役割分担がポイントです。
クリエイティブ・制作会社
ラフ案・コンセプトアートのスピードアップ
初期ラフを大量に出し、良いアイデアを短時間で絞り込むことができます。
広告代理店やゲーム開発会社では、MidjourneyやStable Diffusionでテイストの異なる数十案を一度に生成し、クリエイティブディレクターが方向性を素早く決めるスタイルが広がっています。これにより、従来は1〜2週間かかっていた世界観の確立が数日以内に収まるケースも出ています。
クライアントとの「イメージ合わせ」への活用
複数候補を提示し、方向性の認識合わせを効率化できます。
成功パターンとして多いのは、「最初の1〜2回の打ち合わせにAI生成ラフを持ち込み、言語化しづらい世界観を視覚的に共有する」というやり方です。クライアント側の「こういうのは違う」「これは近い」といった感覚を早期に引き出すことで、後工程の修正回数を減らすことができます。
事業者が押さえるべきAI画像作成ツールの種類
クラウド型・SaaSツール(Canva、Adobe Firefly など)
特徴と向いている用途
GUIが整っており、Photoshop連携やテンプレートが豊富で運用が容易です。法務面で商用利用を明示している製品も多く、マーケティングや広報用途に適しています。
Adobe Fireflyは、Adobe Stockなどのライセンスクリアなデータで学習しており、
企業利用時の著作権リスクが低い
点が評価されています。CanvaはデザインテンプレートとAI画像生成をワンストップで利用できるため、デザイナー不在の中小企業でも導入しやすい構成です。
小規模チームでの導入パターン
まずは有料プランを少人数で試し、テンプレートやガイドラインを整えたうえで横展開するパターンが一般的です。
成果を上げている企業では、「よく使うバナー・アイキャッチ・サムネイル」のフォーマットをあらかじめ数十パターン整備し、AIは主に中身の差し替え(写真・イラスト・背景)に利用しています。これにより、
誰が作ってもブランドトンマナから大きく外れにくく
なります。
API・開発者向けツール(DALL·E、Stable Diffusion など)
自社サービス・業務システムへの組み込み
ECサイト上で商品画像を自動生成したり、カスタム体験を提供したりする際に、API連携によって柔軟に組み込むことができます。
たとえばShopifyのように、商品登録画面に「AIで画像を生成」ボタンを設け、テキスト説明から自動でサムネイルを作成する仕組みを持たせれば、出品者の手間を減らしつつ、サイト全体の画像品質を底上げできます。
ECサイトやアプリとの連携アイデア
商品一覧でパーソナライズ画像を生成したり、ユーザーがテキストで色や雰囲気を指定できるUXを提供したりすることが可能です。
海外では、コスメECで「自分好みのメイクイメージをAIでシミュレーションしてから購入する」体験や、ファッションECで「ユーザーの体型や好みに合わせたコーディネート画像をリアルタイム生成する」サービスが実装され始めています。これらは画像生成APIをバックエンドに組み込むことで実現されています。
オープンソース・オンプレミス型
情報漏洩リスクを抑えたい場合の選択肢
機密データや顧客情報を外部に出せない場合は、オンプレミスやプライベートモデルが有効です。
特に製造・金融・医療など規制が厳しい業種では、Stable Diffusion系モデルを自社サーバーに構築し、機密図面や患者データを含む画像を外部に送信しない運用が重視されています。オンプレミス型であれば、ログ管理やアクセス制御も自社ポリシーに合わせて細かく設計できます。
社内インフラに載せる運用イメージ
GPUを備えたサーバにStable Diffusion系モデルをデプロイし、社内APIを通じて利用する形が一般的です。
社内ポータルや社内チャットツール(Teams、Slackなど)から画像生成を呼び出せるようにすれば、専門部署だけでなく営業・企画・管理部門も気軽に活用できます。大企業では、これを「全社AIアシスタント」として展開し、テキスト生成と画像生成をワンストップで提供するケースも増えています。
具体的な「使いどころ」:どの業務をAI画像に任せるか
1. マーケティング・プロモーション
キャンペーンバナー・特設ページの画像
大量案を生成し、ABテストで効果検証を行う用途に向いています。
シーズナルキャンペーンごとに、色味や構図、登場人物の属性を変えたパターンを一気に作成し、「若年層向け」「ファミリー向け」「ビジネス向け」などターゲット別に最適なクリエイティブを検証できます。生成AIを導入した企業では、マーケティング素材の制作時間を半分以下にしながら、クリック率やコンバージョン率を10〜20%改善した事例も報告されています。
メールマーケティング・SNS広告のABテスト素材
訴求ごとに微調整した画像を用意し、CTR(クリック率)の改善を図れます。
「テキストは同じで画像だけ変える」「同じ画像でキャッチコピーだけ変える」など、複数条件を同時にテストできるため、短期間で“当たるパターン”を学習しやすくなります。
2. 営業・提案活動
提案書・RFP回答書の挿絵やコンセプトイメージ
言葉だけでは伝わりにくいイメージをビジュアルで補強できます。
BtoBの提案案件では、ソリューション全体像や将来イメージを図示することが重要ですが、従来はデザイナー工数がボトルネックになりがちでした。AI画像を用いることで、営業担当自らがコンセプト図を即座に作成し、社内外ステークホルダーとの認識を合わせやすくなります。
PoC・新規事業アイデアのビジュアル化
短時間で「プロトタイプ感」のある資料を作成できます。
社内の新規事業コンテストやPoC提案では、ワイヤーフレームやラフなモック画像をAIで用意することで、「単なるアイデア」から「実現イメージが湧く企画」へと印象を高めることができます。
3. 採用・広報
採用サイト・オウンドメディアのイメージ画像
社風や職場イメージを多様な形で表現できます。
採用広報では、実際の社員写真に加え、「理想的な働き方」や「事業ビジョン」を象徴するイラスト・ビジュアルを用いるケースが増えています。AI画像であれば、記事内容に合わせたオリジナル挿絵を低コストで量産でき、使い回しのストックフォトから脱却しやすくなります。
社内報・インナーブランディングのビジュアル
イベント告知やストーリー図解に活用できます。
社内イベントの告知ポスターや、方針説明資料のイメージ図などをAIで素早く作成することで、総務・人事部門の負担を軽減しつつ、社員の目に留まりやすいクリエイティブを増やすことができます。
4. プロダクト・サービス開発
新サービスのUIイメージやコンセプトビジュアル
初期段階でのデザイン検討を効率化できます。
プロダクトマネージャーやエンジニアが、Figmaやホワイトボードツールに加えてAI画像を併用することで、早期から「画面の雰囲気」「利用シーン」をチーム全体で共有できます。これにより、要件定義段階での齟齬を減らす効果が期待できます。
パッケージデザイン案の初期ラフ
デザイナーの探索作業を短縮できます。
飲料・食品・化粧品などの分野では、AIを使って「ターゲット層別のパッケージイメージ」を数十案レベルで生成し、人間のデザイナーが有望な案を選んで細部をブラッシュアップするプロセスが増えています。アサヒビールや日本コカ・コーラなどのプロモーション事例でも、AI生成アートをベースにした施策が実際に行われています。
5. カスタマーエクスペリエンス
顧客参加型キャンペーン(AIでオリジナル画像を生成)
ユーザー生成コンテンツを通じてエンゲージメントを高められます。
「自分だけのラベルデザイン」「自分の写真をもとにしたオリジナルアート」など、AI画像を活用した参加型キャンペーンは、SNSシェアによる自然拡散との相性が良好です。日本でも飲料メーカーがクリスマスカード生成企画やオリジナルアート作成企画を実施し、大きな反響を得ています。
パーソナライズされた画像コンテンツ
購買履歴や嗜好に合わせた訴求ビジュアルを自動生成できます。
ECやサブスクサービスでは、「過去の購買データ+閲覧履歴」に応じて、メールやアプリ内に表示するビジュアルを差し替え、クリック率や購入率の向上を狙う動きが加速しています。画像生成モデルをCDPやMAツールと連携すれば、ほぼリアルタイムでパーソナライズされたクリエイティブを届けることが可能です。
事業者向けAI画像作成の成功パターン
成果が出ている企業の共通点
1. 「最初から全部AI」ではなく、たたき台として活用している
生成物をそのまま出すのではなく、デザイナーが磨き込む工程を残しています。
成功事例の多くは、
「AIはラフ案・量産・差分生成を担当し、人間が最終品質とブランド整合性の責任を持つ」
という役割分担を明確にしています。その結果、デザイナーは単純作業から解放され、より付加価値の高い企画・ディレクションに時間を割けるようになっています。
2. 目的別にツールを使い分けている
短納期案件にはSaaS、機密案件にはオンプレミスといった棲み分けを行っています。
たとえば、マーケティング部門はCanvaやFireflyなどのSaaS、研究・開発部門はオンプレミス環境でのStable Diffusion、顧客向け体験にはDALL·E APIといったかたちで、「用途×リスク」に応じた最適ツールを組み合わせている企業ほど、生産性とリスク管理の両立に成功しています。
3. 社内でプロンプトスキルを共有し、テンプレート化している
単発の勉強会で終わらせず、成功したプロンプト・失敗したプロンプトを蓄積し、「プロンプトライブラリ」として共有しています。
こうした取り組みを行う組織は、個人差に左右されにくく、社内全体での活用レベルが早期に底上げされる傾向があります。
業務プロセスへの組み込み方
効果が高い置き換えポイント
既存フローのうち、初期アイデア出し、バリエーション作成、簡易修正など、反復的で付加価値の低い作業から優先的にAIに置き換えると効果的です。
いきなりフロー全体を変えるのではなく、
「時間はかかるが付加価値が低い作業」から任せる
のが基本方針です。たとえば広告制作であれば、
- ラフスケッチ生成
- 色違い・レイアウト違いの量産
- 簡単な背景差し替え
といった工程から着手すると、現場の抵抗感も少なく、成果が見えやすくなります。
デザイナーとの役割分担の考え方
AIは量産と発想支援を担い、デザイナーは品質担保とブランド最終調整に集中します。
クリエイター側の「仕事を奪われる不安」を和らげるためにも、
「AIを新しいブラシや新しい撮影機材のようなツールとして位置づける」「最終アウトプットの責任は人間が持つ」
といったメッセージを経営層やマネージャーが明確に発信している企業ほど、導入がスムーズに進んでいます。
注意したいポイントとリスク管理
著作権・ライセンスの基本
事業者が必ず確認すべき利用規約
商用利用の可否、第三者権利侵害リスク、生成物の利用範囲(再販や二次利用の可否)は必ず確認する必要があります。Adobe Fireflyのように商用向けデータで訓練されたツールは、比較的安心して利用しやすいといえます。
あわせて、生成物に人物やロゴが含まれる場合の扱い(有名人の顔や既存キャラクターに似た画像の扱いなど)について、自社ポリシーをあらかじめ定めておくと、現場担当者が判断に迷わずに済みます。
「安全な商用利用」ができるツールの見分け方
利用規約に明確な商用利用条項があるか、企業向け契約やエンタープライズプランが用意されているかをチェックすることが重要です。
また、EU AI Actや各国の規制動向を踏まえ、画像の生成プロセスや出所を示すContent Credentials(コンテンツ認証情報)などの仕組みを採用しているかどうかも、ツール選定時の判断材料になります。
AI画像作成は、「プロの代替」よりも「現場の手間を減らし、打ち手の幅を広げる道具」として捉えると、事業者にとって扱いやすくなります。バナーやSNS画像、提案書の挿絵、コンセプトイメージなど、これまで人手と時間を割いていた作業のうち、初期案づくりやバリエーション量産、簡易レタッチのような反復作業を任せることで、制作コストとリードタイムを大きく圧縮しやすくなります。
一方で、学習データと利用規約に基づく商用利用の可否、クラウド利用時の情報管理、ブランドトンマナの維持といった観点を外すと、後からトラブルになりかねません。用途やリスクに応じて、SaaS・API・オンプレミスを組み合わせ、社内でプロンプトやテンプレートを共有しながら運用ルールを整えることが、日常業務に根付かせる近道です。
中小企業であれば「外注していた制作物の一部をAI+簡易ツールに置き換える」、大企業であれば「社内標準ツールとしてワークフローに組み込む」といった形で、自社の規模や体制に合った導入ステップが選べます。まずはリスクの低い用途から小さく試し、うまくいったパターンを横展開していくことで、マーケティング、営業、採用、プロダクト開発など、さまざまな現場で
「画像を用意する負担」
を着実に減らしていけるはずです。
